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2005/09/09 (Fri) 03:49

買い換えたばかりでフル充電の新しい携帯にはメモリがない。

「ゼロからスタート」って耳障りのいい言葉だけど、
地盤看板鞄の何一つない若者が国政選挙に打って出る以上に勝ち目のない賭けだと思う。
要は箸にも棒にもかからない駄洒落を流行語大賞にでっち上げるとか、
今年塩田だった土地を来年二期作用に耕すといった類の無謀な愚策にほかならないのだ。
まあそんなわけでここ数日は旧知の間柄から手当たり次第に聞き込みの頼み込みで、
おとついの晩も大学同期の連中と飲んだついでにせっかくだからと頭を下げてみたところ、
大事な物をなくし、なくしたことを忘れるのが僕の十八番だということを彼らは知ってるから、
含み笑いを浮かべながら、差し障りない程度の個人情報漏洩を快諾してくれた。

とそこへ携帯がぶるぶるした。
ぶるぶるなんてもう何年ぶりだろう。号泣だったら日常茶飯事なのに。
先週も「渡鬼」を見ながらふるふる泣いた。
その日は小島眞ことえなりかずきが台風の目と化した回で、
両親に何やかやを相談しづらくなった思春期の眞が内緒でホームページを作ったものの、
加津の入れ知恵で二人が見ていたことを知って逆ギレ、という話だった。
つーかホームページなんか誰でも見られるのが当たり前なんだし、
もうじき受験を控えた高三とは思えない馬鹿さ加減を象徴した
「俺に隠れて俺の日記盗み見してたなんて汚いじゃないか!」って発言からしてうんこで、
当然「幸楽」は混乱、キミ激怒で五月バッシングという盤石の流れに落ち着くのだが、
ここで普段禿げ散らかしてるだけの父・勇が突然語り出し、僕の涙腺は見事に決壊した。

父さん家庭の事情で大学行けなくてな、一時期は親のこと憎んだりもしたよ。
でもお前の場合は行けるんだから。
眞が行きたいと思ったら行くべきなんだし、行きたくないと思ったらそれでも構わない。
将来の進路なんて、そう簡単に決められるもんじゃないんだよな。
大学行ってさ、これから先のことを考えるっていうのも一つの手だと思うよ。
あと金のことなら心配する必要ないぞ。父さんと母さんがちゃんと何とかするから。

「何とかするの図」が脳裏をよぎっただけでもうダメ、
「息子の父親」って不均衡な構図が垣間見えた時点ですでにストライクゾーンなのだった。
とにかくそのときは映画「東京タワー」の岡田君を意識しながら頬に一筋伝わせて、
その翌週も「Dr.コトー」を見て、時任三郎親子がぎこちなく抱き合ってる姿にふるふるした。
そうあくまで「ふるふる」なのであって、「ぶるぶる」ではなかった。
目をドットにして液晶を覗き込み、掛かってきた番号が登録されてないことを確認し、
自分以外の面々が携帯を弄ってる一人を除いては四人、食と恋愛談義に興じていたので、
さりげなく席を外して電話に出ることにした。

「もしもし」
「(甲高い女の声で)もしもーし♪」
「あのすいません、いったいどちら様ですか」
「えっ覚えてないのー?嘘でしょー!」
「嘘じゃないです。全然覚えがないんで教えて貰えませんか」
「(野太い男の声で)電話変わるけどちょっといい?」
「なんでしょう」

「今から言う口座に30万ばかし振り込んでくれないかなあ」

咄嗟に切った。切ってしまった。
やましいことなんて一ミクロンもないのにしめしめ面白がる余裕は皆無に等しかった僕が
そそくさと席に戻って「振り込め!振り込め!」と興奮気味に語ると、
連中は「はあ?何を抜かしているのだよ君は」といった表情でへらへらしているので、
訝しげに各人の顔を窺えば、さっきメールを打ってると思ってた奴が明らかに「黒」だった。

2005/09/07 (Wed) 03:49

東京湾を真下に屋形船の真上で携帯をなくした。

突然だが、私は日清のラーメン屋さんよりサッポロ一番の方が好きだ。
なぜって単純計算「ラーメン屋さん」を作るときは「一番」の三倍手間がかかるからで、
まず水を沸かす鍋を「麺を茹でる用」と「スープ用」の二種類出さなきゃならないし、
木訥に名を借りた手抜き料理で満足できるほど私は度量の広い人間ではないから
当然中華鍋の代わりにも使えるテフロン加工のフライパンにも火をかけて、
チャッチャッチャッとあんかけテイストの肉野菜炒めもこしらえる。
しかし作ってる間が楽しい分、口に入れるのが自分一人と痛感したときは後の祭りというか、
スリー!ツー!ワン!でヒモ繋いでないのに気付いてでもバンジー!というか、
ヒモといえば、事実ヒモやってた日々の泡沫をさりげなく走馬燈に編集してみたり、
「ほろっへほいひいへ」「ふたひふひゃはらはい」という相手のほくほく顔を思い出したり
みたいな妄想をするからあれが食べたくなるのはよっぽど生に飢えてるときだと思う。

そしてラーメン問題に引き続き、
今回頭を悩ませていたのは、私の髪型が限りなくふじいあきらに似てきたということだった。
というのも、半年前から伸ばし放題の襟足を短くして貰うよう担当に頼むはずだったのが
バックだけじゃなしにトップ以外はフロントも一切合切刈り込んでしまったらこの残暑だ、
さぞ過ごしやすいに違いないと考えたのがレモニー・スニケット以上に不幸な話の始まりで、
結局ふじいみたいな髪型というよりは私のアイデンティティ自体が没個性と化してしまい、
出先でも「あの『口からジャラジャラ』やって」と言われるまでに至ったのである。
これが舞台を出先から家庭やはたまた路上に移しても要求は相変わらずで、
変化といってもせいぜい「ジャラジャラ」が「ジャンジャン」に変わる程度のマイナーチェンジ、
民家の軒先で雨宿りをすれば、ないトランプを出せと子供に石の礫を投げられ、
寺院の軒下で飢えをしのげば、縄張りを荒らすなとクマネズミに鼻息を吹きかけられ、
半ば途方に暮れかかっていたところへクルーズのお呼びがかかったのだった。

船内は聞きしに勝る亜熱帯だったから、
汗掻くついでに恥も掻き捨ての若い足軽たちがコピペのギャル文字を液晶に映し出す一方、
私と東大M2の友達は、生ぬるいビールの空き缶を灰皿に煙草を解禁していた。
「なんで院生のこと『M2』っていうんだ馬鹿」と私が吹かすと、
「『Master』ってことらしいよ知らないけど馬鹿」と彼女も続けて夜空に白い楕円を描いた。
帰国子女でもないのに「マスター」の発音があまりに良すぎたことや
知らないのに答えてるっていう矛盾なんかはちっとも気にならなかったけど、
見た目からして開襟シャツがお似合いな彼女の倒置法には、随分と皮肉の匂いがした。
とはいえ当の私は、まったく別のことで後悔の念に支配されていたからお構いなく、
ひとまず「加藤里奈すごいね」的な生返事を笑顔で包んで寄越した。

2005/09/02 (Fri) 01:21

去年の暮れだか今年の正月に、BSで「阿修羅のごとく」をやっていた。
たしか映画館でも一回見たんだけど、そのときは別にこれといった感想もなくて、
RIKIYAの顔ってスクリーンで見るといびつさが薄れるなあということと
小林薫の「女は、阿修羅だよなあ」ってセリフは身に染みるなあということと
主題歌を歌ってるブリジット・フォンテーヌの声がいいなあということを思っただけだった。
んで、狭いながらも楽しい我が家で見た「阿修羅」の方はどうだったかというと、
これまた大した感想はなくて、白菜って自分で漬けたら美味いよなあと思っただけだった。
じゃなんで「阿修羅」を日記に書くのかって単純な話で、
昼間、うら若き乙女たちに末恐ろしい羅刹の匂いを嗅ぎ取ったからである。
というのも、昨日は「血族」の肩書きを持つ人間が一堂に会するイベントに出席していた。
僕は「親戚の親戚の親戚」という「友達の友達は皆友達」みたいな扱いで、
要は居ても居なくてもいい程度の発言権しかないのに居ないと面倒な立場だったから、
手の施しようもないほどに禿げ散らかした主催者や
従妹のつけてる似非真珠のネックレスを部屋の隅っちょで眺めてたんだけど、
小耳に飛び込んでくる、彼女や彼女の姉や彼女の従妹や彼女の従妹の姉の会話が
自分も剣山の上で串焼きにされるのではないかと錯覚しそうなとげとげしさを孕んでいた。
悲しくもないのに鼻先へハンケチを添えたり、
両耳をダンボにするどころかチャックしてしまいたい話に昭和こいるばりの相槌を打ったり。
女は、阿修羅だよなあ。つくづく化粧臭いといった感じで手酌をしていると、
真横から従妹の父親がへらへらっと笑顔で空のビール瓶を差し出してきたので、
僕も転形劇場を彷彿とさせる芝居で、今そこにない酒を彼と酌み交わした。

2005/09/01 (Thu) 03:48

永久脱毛する位なら永久に生えなくしたいと考えるのが世の常で、
昨日は顎の下と臍の下、あと自慢にもならないちんこをめぐる一連のふさふさを一本一本、
雪待にんにく卵黄を作るような丁寧さ慎重さで全部抜き取ったらとても涙が出ました。
これ以外にあと昨日は、やたらと「ものかき」ばかりしていたように感じます。
今日締め切りという四百字詰め五枚分のレポートに手を入れてみたり、
原稿をくるっと丸めて指三本が余裕で入る見事なオナホールをこしらえたりしていました。
そして翌朝は、Mステのビデオを見ながら半年遅れで完コピしたファンタスティポの振り付けを、
ちょうど我が家へ泊まりに来ていた親戚んちの赤ちゃんに披露してみせたのですが、
何だか流し素麺みたいな顔をされて思わず逃げ出したい気分になりました。
まったくもって、「どんな役者も子供と動物には叶わない」とはおっしゃる通りです。
子供という生き物は大人に対する権謀策術にことごとく精通していながら、
自分が天性の魅力を持っていることに気付かない、まさにダミアンのような輩なのです。
考えてみれば夕べだって、木原実がエキストラの子供たちにオーラで負けてたし。
そんなこんなで責め手を欠いてマニックスの「ホーリー・バイブル」を聴かせてみたところ、
どうやらダミアンはこの子守歌がお気に召したようで、今はすやすやと寝息を立てています。

2005/08/28 (Sun) 00:04



心の距離が縮まらないうちに相手の名前は呼べないなあ。
昨日も男の子に「何とかくん」、女の子に「何とかさん」と声をかけてしまった!と思った。
この野暮ったい口から発せられた敬称は当分苗字の尻先に付着し続けるわけで、
飲み屋で「おい○○」と肩に手をかけても「『くん』だろ?」と釘を刺され、
仕事中に「××コピー頼む」と言おうものなら「『さん』でしょ?」と念を押されるのだ。
まあこうした身から出た錆びを根拠のない自信が跳ね返すこともままあって、
たぶん今年の再放送では出てこないと思うけど「タッチ」の吉田なんかは特にそう。

恋愛にしたってやっぱり同じことで、
初対面で伏し目がちな彼氏が「△△ちゃん」と呼び名を決めたばっかりに
それまで品を作っていた彼女は「この勝負貰った!」と胸中で勝ち鬨を上げるのである。
根拠のない自信だね。そんなことを「おでんくん」のアニメ見ながら考えていました。
おでんくんの暮らしている「おでん村」は、「醍醐の花見」的というか、
脳が見たい物だけを選んで目の前に映し出したような世界なんだけど、
登場キャラの中でも特別顔に性格が出ている「ガングロたまごちゃん」が僕は好きです。

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