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2005/08/19 (Fri) 15:35

オーディションされる夢を見た。
面接官から「お気に入りの女優はいますか?」と藪から棒に聞かれて、
横に並んで座ってる連中は「蒼井そら」だの「森下くるみ」だのと答えていたので、
自分も順番が回ってきたらそんな風な名前を答えなくちゃというところで一度目が覚めた。
経験ないなりにも一応男優としての決め台詞を考えてみたんだけど、
「ナッツぎっしり確かな満足!」という昇天後の不条理なセリフばかりが頭に浮かんで、
なんたる悪夢だと辟易しているともっと深刻な眠りに落ちた。
今度は舞台が知り合いの職場に切り替わり、
自分も他の同僚から夏休みのお土産を頂戴しているシーンになった。
斜向かいに座っている松本さんは、自分にマルセイのバターサンドをくれた。
課長はジンギスカンキャラメルを貰ったらしく、舌の上で転がしつつ苛々を募らせている。
というのも、彼はこのお土産合戦を入社当時から快く思っていなかった。
普通、人間が何事かに対して快く思わない理由というのは根が深く、
緻密に入り組んであるのが常道だが、課長の場合は非常に単純な動機であった。
彼は性根の腐った人間だったのでお土産をもらえなかったのだ。
そんなわけで、課長は部下全員にお土産は買わないよう、厳しく申し伝えたはずなのに、
鹿児島の実家から戻ってみればどういうわけかこの有様で、彼の性根はますます腐った。
しかし人間、腐りきってしまうと第三者的立場で物を捉えることができるらしく、
課長も腋臭を撒き散らしながら、今後の身の振り方を冷静に考えることができた。

くびにしたい。
ああこいつらくびをくびしてくびくびにけつかりたい。まあ無理だけど。
下手に注意もできんし、またぞろ「中年男性のやっかみ」と受け取られかねないしね。
自分はたしかに性根の腐った人間だけど、サラリーマンとしては腐るどころか品行方正、
松本さんから湯飲みに鼻糞入りの番茶を注がれても涼しい顔でいられるのは他でもない、
「課長」として職場に波風を立たせたくない一心からなんだよ。
すべて仕事の効率を上げるため、お土産禁止も時間の浪費を避けるために言ったんだぜ。
それをなんだよ、あの「松本」って女はさ。むかつく。
若い男にはちゃらちゃらと「バターサンド」やら「白い恋人」なんぞ配りやがって、
そのくせ課長である俺様に対して「ジンギスカンキャラメル」とは実にふざけている。
いやキャラメルの製造元には何の恨みもない。恨みがましい味であることは事実だけど。
履歴書を見ると彼女ってば看護大卒らしいじゃん。
人を外見で判断するのは良くないが、自分が患者ならまず血管注射は頼まんね。
「血管注射しまーす」という言葉の「しまー」の「まー」あたりでまず一回目のミスがあって、
「あっすいませーん」の「ませー」の「せー」で二回目、
三回目の前に首から胸元に大量の汗を流しながら深呼吸してまたミスするに決まっている。
そしてこの間、俺は最近気になりだした臍から下の毛を剃るべきかどうかで悩んでいる。
そもそもなんで臍から下の毛が気になりだしたのかというと、
先週の同窓会で十五年ぶりに顔を合わせた女友達の腕毛がものすごいことになっていて、
別の女の子に「あいつ伸ばしっぱなしなのかなあ。男でも気になるのに」といったところ、
「直接本人に聞けば。人を介さないと何もできない奴って最低」とばっさりやられたからだ。
女はどうだか分からないが、四十過ぎた男は躊躇うのだ。
直接聞けるほど気心の知れた相手でも、目にした瞬間口にできるか自信は持てない。
憔悴してしたたか酔った。帰宅すると真っ先に風呂場の電気をつけ上半身裸になった。
よろめきながら再び居酒屋での会話を思い出し、おもむろに臍の下を覗く。
俺も剛毛ではないか。
ためしに普段顎の髭を剃る安全剃刀で、そっと腹の周りを撫でてみた。よく剃れた。
しばらく撫でているうちに楽しくなり、あげく臑毛や脇毛まで剃り尽くしてから俺は爆睡した。
ところが翌朝は地獄だった。もう生えていたのだ。しかも昨晩より体よく伸びていた。
毛は剃ったら生える物というのは知っていたが、こう見事に復活されると驚きで、
除去したはずの黒子が復活したエンリケ・イグレシアスのような気分で朗々と歌った。
以後体毛は脱いだらすごいんです的に人目に付かない部分でやたらと勢力を拡大し続け、
その勢いはとどまるところを知らず、やがて家主の体力を蝕むまでに増長した。
苦楽をともにする伴侶もなく、介護する親もこの世にはおらず、
一介の会社人間として人生を終えるつもりが、たかが体毛ごときに命を奪われるなんて。
こないだ俺を「最低」呼ばわりした女友達に電話して事の次第を話すと、
「馬鹿ね黒江君、そんなスティーヴン・キングみたいな話あるわけないよ」と鼻で笑われた。
そうかこれは夢か。なら松本が三回目のミスをするまで剃る剃らないで迷うこともない。
つーか松本は俺の同僚だから注射の件はあくまで想像だし、
逆に彼女からはお土産を貰っており、お土産とはつまり少なからず好意がある印だ。
安堵した。俺の体毛は本物だけど俺は死なない。もし死んでも俺の体毛は死なない。
自分の今いる世界が夢であることを教えてくれた女友達にはもちろん、松本にも感謝した。
この気持ちを岡本知高似の彼女に態度で示す、とっておきの方法。
それは彼女が差し出した鼻糞入りの番茶を、自分が嬉々として飲み干すことだ。

黒江課長の全身に巣を張り巡らせた体毛はまず彼を阿呆にし、
ワイシャツの隙間をくぐり抜けると嬉々として鼻糞入りの番茶に暗い影を落とし、
松本さんを飲み込んでから部屋中を墨汁に染めたところで二度目の朝を呼びました。

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