--/--/-- (--) --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


2005/08/28 (Sun) 00:04



心の距離が縮まらないうちに相手の名前は呼べないなあ。
昨日も男の子に「何とかくん」、女の子に「何とかさん」と声をかけてしまった!と思った。
この野暮ったい口から発せられた敬称は当分苗字の尻先に付着し続けるわけで、
飲み屋で「おい○○」と肩に手をかけても「『くん』だろ?」と釘を刺され、
仕事中に「××コピー頼む」と言おうものなら「『さん』でしょ?」と念を押されるのだ。
まあこうした身から出た錆びを根拠のない自信が跳ね返すこともままあって、
たぶん今年の再放送では出てこないと思うけど「タッチ」の吉田なんかは特にそう。

恋愛にしたってやっぱり同じことで、
初対面で伏し目がちな彼氏が「△△ちゃん」と呼び名を決めたばっかりに
それまで品を作っていた彼女は「この勝負貰った!」と胸中で勝ち鬨を上げるのである。
根拠のない自信だね。そんなことを「おでんくん」のアニメ見ながら考えていました。
おでんくんの暮らしている「おでん村」は、「醍醐の花見」的というか、
脳が見たい物だけを選んで目の前に映し出したような世界なんだけど、
登場キャラの中でも特別顔に性格が出ている「ガングロたまごちゃん」が僕は好きです。

スポンサーサイト

2005/08/22 (Mon) 13:39

「セックスってさ、運転と一緒だと思うんだよね」
「どこが」
「ほらアクセル踏んでも鍵がちゃんと穴に差し込まれてないと車動かないじゃん」
さっきから昼のミスドに到底似つかわしくないカップルの会話が聞こえる。
スピードワゴンの小沢みたいな気障ったらしい持論をしゃあしゃあと展開している男と、
男にさほど興味のなさそうな女が自分の席から斜め45度のテーブルで対峙していた。
彼の言い分をかいつまんで説明すれば、
こちとらやる気満々なのに相手にその意思はないから夜の生活がとんとご無沙汰で、
「今晩しようよ」と向かいの彼女に言いたいんだけどオブラートに包む勇気がなくて、
俺なりに気を遣って喋ってるんだ、とアピールしてるんだ、ということらしい。
でも斜め45度の彼は、正直哀れだった。
落とし穴か行き止まりしかない迂回路を、行ったり来たりしているようにしか見えなかった。
面白い日記を書いて「おもろ」といって貰いたいがために、
普段使わない漢字や横文字を並べ立てていた小学生の頃の自分みたいだと思った。

そんな私は昨日、いい歳してホームセンターで迷子になった。
「いい歳」っていうのはたぶん「分別のある年齢」を指すんだろうけど、
その点「『分別』より『女満別』の方が語呂的に好きだなあ」と考えてみたり、
家まで歩いて帰れる距離なのに面白半分で係員に放送を頼む私は小学生以下で、
結果罰が当たったのか、呼び出しをかけても連れの誰一人として迎えには来なかった。
「うーん、先に帰ったんだと思います」と逃げ口上を残して迷子コーナーから立ち去り、
家具に園芸、作業着と目に付く品を物色して回っているうちに、
化粧品売り場で試供品の石鹸を配る今宿麻美似の女の子に仕事を手伝わされていた。
「ちょっと君、さっき迷子コーナーから出てきたっしょ。だっさー」
「あの貴方、とても香水臭いですよ。これじゃ歩くブルガリ、『ブルガリータ』じゃないですか」
「は何それ。どうでもいいけど。つーか暇なら配んの手伝って。いいよね、はい決まりー」
今宿さんはロレアルパリやパンテーンのCMに出てても不思議じゃない健康そうな髪と、
見る者すべてに「苦労知らず」という言葉を思わせる、美しく長い爪を持っていた。
「苦労をしただけ髪は伸び、楽をするほど爪伸びる」とはまさに彼女のことで、
「純粋培養のビニルハウスガール」
「現代に舞い降りたマリーアントワネット」
TBSのスポーツ中継風に形容して一人、胸の内で楽しんでいると猛烈にどつかれた。

そんなことを思い出していたら、男の方が突然席を立った。
「ちょっと小便」と言って彼はトイレに向かったが、実に長い、大便のような小便だった。
すると、それまで男の戯れ言に「うん」「まあね」と適当な相槌を打っていた女が動いて、
涼しい顔のまま、男の珈琲カップにありったけのシロップと角砂糖を溶かし込んだのである。
そうとも知らずにやっこさん、
席について早々それを口に含んだ途端、「あんまーい!」と全部吐き出した。
数分前の小沢が今は井戸田だった。男は見事な変わり身で一人二役を演じて見せたのだ。
どうやら彼に相方は必要なさそうだ。破局もそう遠い話じゃないかも知れない。

2005/08/19 (Fri) 15:35

オーディションされる夢を見た。
面接官から「お気に入りの女優はいますか?」と藪から棒に聞かれて、
横に並んで座ってる連中は「蒼井そら」だの「森下くるみ」だのと答えていたので、
自分も順番が回ってきたらそんな風な名前を答えなくちゃというところで一度目が覚めた。
経験ないなりにも一応男優としての決め台詞を考えてみたんだけど、
「ナッツぎっしり確かな満足!」という昇天後の不条理なセリフばかりが頭に浮かんで、
なんたる悪夢だと辟易しているともっと深刻な眠りに落ちた。
今度は舞台が知り合いの職場に切り替わり、
自分も他の同僚から夏休みのお土産を頂戴しているシーンになった。
斜向かいに座っている松本さんは、自分にマルセイのバターサンドをくれた。
課長はジンギスカンキャラメルを貰ったらしく、舌の上で転がしつつ苛々を募らせている。
というのも、彼はこのお土産合戦を入社当時から快く思っていなかった。
普通、人間が何事かに対して快く思わない理由というのは根が深く、
緻密に入り組んであるのが常道だが、課長の場合は非常に単純な動機であった。
彼は性根の腐った人間だったのでお土産をもらえなかったのだ。
そんなわけで、課長は部下全員にお土産は買わないよう、厳しく申し伝えたはずなのに、
鹿児島の実家から戻ってみればどういうわけかこの有様で、彼の性根はますます腐った。
しかし人間、腐りきってしまうと第三者的立場で物を捉えることができるらしく、
課長も腋臭を撒き散らしながら、今後の身の振り方を冷静に考えることができた。

くびにしたい。
ああこいつらくびをくびしてくびくびにけつかりたい。まあ無理だけど。
下手に注意もできんし、またぞろ「中年男性のやっかみ」と受け取られかねないしね。
自分はたしかに性根の腐った人間だけど、サラリーマンとしては腐るどころか品行方正、
松本さんから湯飲みに鼻糞入りの番茶を注がれても涼しい顔でいられるのは他でもない、
「課長」として職場に波風を立たせたくない一心からなんだよ。
すべて仕事の効率を上げるため、お土産禁止も時間の浪費を避けるために言ったんだぜ。
それをなんだよ、あの「松本」って女はさ。むかつく。
若い男にはちゃらちゃらと「バターサンド」やら「白い恋人」なんぞ配りやがって、
そのくせ課長である俺様に対して「ジンギスカンキャラメル」とは実にふざけている。
いやキャラメルの製造元には何の恨みもない。恨みがましい味であることは事実だけど。
履歴書を見ると彼女ってば看護大卒らしいじゃん。
人を外見で判断するのは良くないが、自分が患者ならまず血管注射は頼まんね。
「血管注射しまーす」という言葉の「しまー」の「まー」あたりでまず一回目のミスがあって、
「あっすいませーん」の「ませー」の「せー」で二回目、
三回目の前に首から胸元に大量の汗を流しながら深呼吸してまたミスするに決まっている。
そしてこの間、俺は最近気になりだした臍から下の毛を剃るべきかどうかで悩んでいる。
そもそもなんで臍から下の毛が気になりだしたのかというと、
先週の同窓会で十五年ぶりに顔を合わせた女友達の腕毛がものすごいことになっていて、
別の女の子に「あいつ伸ばしっぱなしなのかなあ。男でも気になるのに」といったところ、
「直接本人に聞けば。人を介さないと何もできない奴って最低」とばっさりやられたからだ。
女はどうだか分からないが、四十過ぎた男は躊躇うのだ。
直接聞けるほど気心の知れた相手でも、目にした瞬間口にできるか自信は持てない。
憔悴してしたたか酔った。帰宅すると真っ先に風呂場の電気をつけ上半身裸になった。
よろめきながら再び居酒屋での会話を思い出し、おもむろに臍の下を覗く。
俺も剛毛ではないか。
ためしに普段顎の髭を剃る安全剃刀で、そっと腹の周りを撫でてみた。よく剃れた。
しばらく撫でているうちに楽しくなり、あげく臑毛や脇毛まで剃り尽くしてから俺は爆睡した。
ところが翌朝は地獄だった。もう生えていたのだ。しかも昨晩より体よく伸びていた。
毛は剃ったら生える物というのは知っていたが、こう見事に復活されると驚きで、
除去したはずの黒子が復活したエンリケ・イグレシアスのような気分で朗々と歌った。
以後体毛は脱いだらすごいんです的に人目に付かない部分でやたらと勢力を拡大し続け、
その勢いはとどまるところを知らず、やがて家主の体力を蝕むまでに増長した。
苦楽をともにする伴侶もなく、介護する親もこの世にはおらず、
一介の会社人間として人生を終えるつもりが、たかが体毛ごときに命を奪われるなんて。
こないだ俺を「最低」呼ばわりした女友達に電話して事の次第を話すと、
「馬鹿ね黒江君、そんなスティーヴン・キングみたいな話あるわけないよ」と鼻で笑われた。
そうかこれは夢か。なら松本が三回目のミスをするまで剃る剃らないで迷うこともない。
つーか松本は俺の同僚だから注射の件はあくまで想像だし、
逆に彼女からはお土産を貰っており、お土産とはつまり少なからず好意がある印だ。
安堵した。俺の体毛は本物だけど俺は死なない。もし死んでも俺の体毛は死なない。
自分の今いる世界が夢であることを教えてくれた女友達にはもちろん、松本にも感謝した。
この気持ちを岡本知高似の彼女に態度で示す、とっておきの方法。
それは彼女が差し出した鼻糞入りの番茶を、自分が嬉々として飲み干すことだ。

黒江課長の全身に巣を張り巡らせた体毛はまず彼を阿呆にし、
ワイシャツの隙間をくぐり抜けると嬉々として鼻糞入りの番茶に暗い影を落とし、
松本さんを飲み込んでから部屋中を墨汁に染めたところで二度目の朝を呼びました。

2005/08/17 (Wed) 00:17

公開から2ヶ月してもういいかげん空席がちらちら、
席取りも難儀じゃなくなってるだろうと勝手に憶測を立ててスターウォーズを見に行った。
実際はまだ混んでていらついたんだけど、でも家出る前から便秘で心底いらついていた。
総武線の車内で便の籠城ぶりがいかに頑なかを他の乗客に向けて心痛な面持ちで語り、
楽天地という名の割に開けてねえなと思いながら錦糸町の地に降り立って数分後、
受付からやや離れたところに置いてある黒い中型テレビを眺めていたときに地震が起きた。
テレビにはミムラと伊藤英明が共演する「黄泉がえり」もどきの予告編が映し出されていて、
そんなことよりまず地面が縦に揺れ、次に揺れた反動で身体が横に揺れた。
その場にいた誰もが震源イコール宮城という発想には至らず、
おいおいこれ揺れてるよー揺れちゃってるなーとえらいもっちゃりした笑顔で揺れていた。

んで、肝心の映画は始まるまでにビール飲み過ぎて、
上映一時間ぐらいからおしっこ行きた過ぎて内容なんか全然頭に入らなかったんだけど
見に行くちょうどひと月前に「Cut」7月号のスターウォーズ特集を読んで、
中でもピーター・トラヴァースの酷評が印象に残ってたせいで全然面白いと思えなかった。
だからといって全部トラヴァースの責任トラヴァースが悪いとも言い切れない、
受け売りしまくりな自分に軽く凹んだので気晴らしに華屋与兵衛で茶碗蒸しを食べた。
三つ葉って茶碗蒸し以外では決して口にはしないのに
あの洒落た小瓶から漂う緑の薫りを嗅ぐとどうして気持ちが落ち着くんだろう。
友達から勧められたお香をどんだけ焚いてもリラックスできないのに、
三つ葉入りのお澄ましを飲んだり茶碗蒸しの蓋を開けた途端、恐ろしく便意はやってくる。
あと舞茸の天ぷらがしゃきしゃきしてた。あまりに素敵な食感でしばらく反芻した。

2005/08/15 (Mon) 03:27

なんか知らんまに三キロばかし体重が落ちてた。恐ろしく実感がない。
まず先週の日曜、ひと月ぶりに会った女友達から「おべっかくん痩せた?」と言われて、
土曜に美容院の担当から「おべっかさん痩せた!」と言われたので量ってみると事実だった
と書く予定だったのが実際には量ってないから「三キロばかし」はあくまで期待値だ。
前者がくん付けの疑問符で後者がさん付けの感嘆符なのはああやっぱりねという印象で、
僕の屁が父親譲りの爆音と母親譲りの悪臭を備えた化学兵器であることを知ってる前者と、
サロン前夜からニラニンニクスカンク等を一切口にしてないことなど知る由もない後者の、
自分に対する認知度というか好感度の歴然とした違いから生じた賜物に違いない。
何はともあれ複数の異性から以前よりスマートに見られたのは感慨無量で、
それだけが理由じゃないけどそろそろ本格的に実用的な日記を書き始めようと思う。
この本格的というのは今までの日記が決して不の本格的だったという意味ではなくて、
じゃあ無の本格的かというと違うし非の本格的かといわれても首を横に振らざるを得ない。
商品名に「本格」を配した冷凍食品ほど本格云々を舌先で判断しかねるものはないし、
先を取るより実を取った本格というか、
一行で片づければカレーのルーにココナッツミルクやらターメリックを足す感じというか、
蚊に足の親指の関節を刺されて死ぬほど痒くなってるところにムヒを塗ったはいいけれど
この国特有の湿気ですっかりぐしゅぐしゅになってしまった患部に再びムヒを塗り直すような、
早い話がウィングスのラストアルバム「バックトゥジエッグ」の再来みたいな、
統一性に欠けても精彩さは欠かないアルチザン宣言みたいなものだと思う知らんけど。
ちなみに今日はそんな職人気質がまったく必要ない保険会社の面接が控えている。
保険会社なんてポケットティッシュくれる人が働いてるイメージしかないから、
生保よう言わんわ的なエントリシートを書いたのになぜか呼ばれてしまって困っている。
しめじみたいに細く短い人生の中で一次選考が通るなんてキューピー以来の快挙、と取るか、
流水算を知らずに友達と川をモーターボートで上り下りするような自分は噛ませ犬、と取るか。
どっちにしろ貪欲が毛穴からはみ出てそうな大学三年生に混じって自己PRするからには
年齢差を笑いに変える何らかの切り札をと考えたら死語が無数に浮かんだだけだった。

2005/08/13 (Sat) 03:11

全会一致であだ名が「課長」になった。

2005/08/12 (Fri) 00:43

私の名前はリンカーン6エコーでもジョーダン2デルタでもないが、
昨日はさる企業が「『アイランド』にきてください。」というので西新宿まで行ってきた。
西新宿のアイランドという響きからしてまずきな臭さを感じるのが当然なのに、
アイランドと聞いて真っ先に石川優子の顔がチラついてしまうのはエイティーズの性で、
地下鉄丸ノ内線の改札口を出てエスカレーターを上り始めた瞬間、
おそらく視界には「都心に突如現れた南国の楽園」が飛び込んでくるものと思いきや、
地下通路の案内図に示された「アイランド」は楽園どころかクローン人間の墓場でもなく、
ただの高層ビルヂングだった。トールサイズであった。
アイランドタワーにアイランドレジデンスに、アイランドウイングにアイランドパティオ。
「負ける気がしねえ」と啖呵切ったロト6で有り金使い果たしたような気分になった。
都庁に向かう横分けを横目に家路が恋しくなり始めた田舎侍だったが、
猛烈な喉の渇きを覚えていったんアイランドレストラン街の洋食屋に入ることにした。
ハイソな外観に自由が丘テイスト満載の店内。汁粉の値段も怖くて読めない。
カルチャーショックとホームシックを一度に起こした鈍ら侍は元来た道を踊って帰った。

2005/08/10 (Wed) 16:38

定期券の有効期限が8月8日で切れていたので、
その日は「自分マイル」を稼ぐことにした。自分マイルは自分のマイルという意味だ。
自分マイルだから当然溜まった溜めたと騒いだところで神様は大人しい、何もくれない。
まあ正常な人間なら分かるだろうけど、「自分マイルを稼ぐ」っていうのはほら建前やね。
異常な人間の本人至って正常と言わんばかりの妄言というか逃げ道というか、
要するに二時間ドラマの冒頭で殺される遠藤憲一とか尾美としのりみたいな奴が
行き止まりって知りながらついつい逃げ込んでしまう常道みたいなもんで、
自分の場合も本当は二日酔いを醒ます体のいい寝床を探していただけである。
かといって昨晩に気心の知れた友人達としたたか酒を飲んだことを後悔するわけでもなく、
むしろかねてよりなんつーかなー北川悦吏子もずっと書いてるような
「遠距離恋愛は長続きするか」だの「異性間の友情は存在しうるか」だの些末な問題を
アルコールが入ってる割りにはみんな至極まっとうな顔の風で語ったことを楽しく回想した。
「合コンすれば盛り上がるし海岸歩けば声もかけられるけどそこから何の進展もない」とか
「そもそも現在の職場にそんな出会いはない」みたいな、本来げらげらと笑うべき類の話を
誰もが奉行所の白州で沙汰を受ける庶民のごとく神妙な面持ちで聞くのだから笑うしかない。
笑うしかないのだが自分も勿体ぶった表情でへむへむへむれんさんと頷きながら
「おう熊おめえのかかあは今日も今日とて金の無心かい酒飲みの女房てな大変だねえ」
「なんでい八んとこも夕べっから見かけねえじゃねえかさては愛想尽かして逃げられたな」
といった具合で四方山話の山手線に知らず知らず乗せられてうへやあ。

10年前ならBGMにCAGNETが流れてそうなトークをカラオケ挟んで四六時間も続けたのち、
気付くと本物の山手線に乗っていた。単身だった。口臭は酷く次の停車駅は恵比寿だった。
どうやら総武線でいったん千葉まで行ったらしい。
ひょっとしたら自分はこのまま房総半島最南端の野島崎に強制連行されるのではないかと
酩酊の頭でも恐ろしくなって上り電車に乗り換えたつもりが途中京王線に乗り換えたようだ。
調布にまで足を伸ばしたと見えてどうも衣服に調布の臭いがする。
それでもどうにか恵比寿に近づき皇帝ペンギンの映画でも見ようかと一瞬思ったが、
魚肉ソーセージの絵が浮かんできたので気持ち悪くなって近くのラブホで休むことにする。
焼鳥屋で腹ごしらえしてから無心でぶらぶら歩いていると、
ちょうど一軒のホテルから出てきたカップルから「すげえよあのバス」と劇的に勧められて、
受付に案内されるがまま一番値の張る部屋のレインボージェットバスで三時間眠った。
万華鏡はこの世の物だが、たしかにこの世の物とは思えない万華鏡のようなバスだった。

というわけで郵政が民営化されようが衆議院が解散されようが、
はたまた選挙の投票日が9月11日だろうが、当日は恵比寿に足を運ぶことになりそうだ。
別にラブホ未経験の人やラブホでやる行為が未経験の人を挑発しているわけではない。
単に8月一杯は無闇矢鱈と予定が立て込んでいて一日どフリーなのがその日ぐらいなのだ。
それにセックスもしない。
そういえば素面の会話に「セックス」という単語が混ざっても動じなくなった。複雑だ。
中学生同士すれ違い様に「セックス!」「セックス!」と照れ隠しに挨拶していたのはとうの昔、
今では一日を五線譜とするならセックスはト音記号か休符終止符のようになってしまった。

まあ要するにラブホイコールセックスとは限らないのである。
仮にラブホという平坦な戦場で生き抜くために必要なのがちんことまんこの吉原炎上だとして、
自分にはそのどちらもついてないつんつるてんと言い切ってしまえばそれきりの話だし、
ライブハウスで音楽家の名前や楽曲のフレーズをシャウトしなければならない道理はないし、
山手線に乗り込んだら終電までにどこぞの駅で必ず降りなければならない言われもないし、
昨日のラテ欄に「渡る世間は鬼ばかり(最終回)」とあったはずが
今日のラテ欄に「渡る世間は鬼ばかり(再放送)」と書かれていること以上の不条理はない。

2005/08/07 (Sun) 16:43

喜多嶋隆の有名な小説に「ブラディマリー」シリーズというのがあるけど、
この酒が貧民窟ではお目にかかれないカクテルと知ったのはつい最近のことだ。

デラウェアを皮ごと平らげてしまうほどに無頓着な私は、
その日も六本木に来てくれと連絡を貰ったところでルノアールとシャノアールはもちろん、
アマンドとルマンドの違いもわからぬまま二三十分ほど夜の街をさまよったあげく、
ミルフィーユのような分厚い白粉を纏った男に手を引かれて目的地のクラブに到着した。
中ではすでに出来上がった二十代と縮み上がった十代との間に確実な温度差があり、
そのどちらでもないニュートラルな状態の私はビールとハイライトを両方から勧められた。
寝不足で、正直酒も煙草も受け付けられる身体ではなかった。
小さなフロアで腰をくねらせるダンサーの女の子達を眺めていると途端に眠気が襲う。
そして、「コーヒーが飲みたい」とオーガナイザーの後輩に声をかけてすぐ、
「もっといいモンありますよ」と目の前に差し出されたのが、あのブラディマリーだった。

近くでは自分の後に入ってきた男の客がアプリコットクーラーを注文していて、
どうも一見さんの酔っぱらいらしいということで黒人のガードマンから袋叩きに遭っている。
ドイツ製のソファよりもっとごつごつした椅子に座りたくなってカウンター席に向かうと、
スーツの上からでも見事な逆三角形とわかる細身の男がジンフィズを飲み干していた。
同級生だった。名字で呼ぶと「違う『DJなんちゃら』だ」といわれた。なんちゃらは忘れた。
今は新宿で週一はレコードを回してるんだと聞かされたのだがふーんと言うしかない。
他人の自慢話に対して、可能な限り打てる最高の相槌とは何だろう。
友情だけで本心から感心するのなんて無理だ。ふーんでいいのだふーんでと諦めた。
彼との唯一の共通点は中学の学園祭でルパン三世の芝居をやったことだ。
そのころバリバリの水泳部だった彼は季節感を度外視した長髪のうじきつよしだった。
石川五右衛門をやると立候補して剣道部の部室から竹刀を盗み「斬鉄剣や」といった。
私は当時波平の声真似が上手かったのでカリオストロ伯爵の執事に選ばれた。
そんなことを思い出してから改めて周りを見るとさっきの酔っぱらいはもういなくて、
代わりにフロアの片隅で血の塊が幾何学的な模様を描いていた。
同級生に「怖いから俺寝る」と告げ、突っ伏してしばらくすると「夜明け」という声が聞こえた。

地上に出ると、ゴミを漁るカラスの横でメッシュのタンクトップがホームレスを脅している。
私はビッグイシューの宣伝をしていた別のホームレスからプラカードを借りて、
「愛!と!平!和!」と叫びながら針穴に糸を通すヤン・ゼレズニースタイルで投擲した。

| ホーム |

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。