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2005/07/14 (Thu) 09:38

津嘉山正種さんが脳梗塞で舞台を降板した。軽症で退院も近いそうだ。
身内も最近脳の病にかかったので何か引っかかった。が、僕は彼をあまりよく知らない。
いや「つかやま・まさね」と読むことぐらいは知っている。俳優であるのは百も承知だ。
「踊る大捜査線」で室井の上司だった、といえばピンと来る方も多いのではないだろうか。
ちなみに僕が初めて津嘉山さんを知ったのはラジオだ。重低音の効いた渋い声だった。
NHK-FMのプライムタイムに放送されていた、「クロス・オーバー・イレブン」。
彼はいつも、ベッドタウンの住人達がおおよそ寝静まった頃合いを見計らって現れる。
そしてタラップを下りるパーサーのように颯爽と、優雅な語り口で物語の幕を開くのだ。

今日も一日が通り過ぎていきます
昼のあわただしさの中で忘れていた
人を愛する優しさ
人を信じるぬくもりを
そっとひろげてみます
夜空の星のきらめきとともに
それぞれの想いをのせて過ぎていく
このひととき
今日一日のエピローグ

クロスオーバー・イレブン


あるときは海外小説の一編を、またあるときは知人との他愛もない雑談を。
そんな風にも聞こえたが、実のところ彼が何を喋っていたのかはよく覚えていない。
五歳児が「土曜ワイド」で松尾嘉代と池波志乃と中島ゆたかの罵り合いを見たときのような、
結果1時頃まで眠れずテレ東をつけたら「三乳士」と名乗るイジリー岡田を見たときのような、
とにかく得も言われぬ大人の世界、AORに幾度となく僕はくらくらしたのである。
数年前の正月、お年玉目当てに訪ねた親戚宅で「声優の方がいい俳優」の話をした。
こういうとき、津嘉山さんは決まって若山弦蔵や石田太郎あたりと並んで常連組である。
メインじゃないけどエース。スラダンでたとえるなら大栄・土屋、常誠・御子柴のラインだ。
エリオット・ネス、ジム・ギャリソン、ワイアット・アープにロビン・フッド。
演じているのはいずれもケビン・コスナー。彼の声はどの役柄でも津嘉山さんがぴったりだ。
クリント・イーストウッドといえば野沢那智ではなく山田康雄と誰もが口を揃えるように、
ケビンの外見に生きた日本語を吹き込むことができるのは、彼をおいて他にいないからだ。
もちろん声だけが素晴らしいわけじゃない。
去年オンエアされた「ちょっと待って、神様」。このドラマでの津嘉山さんは最高だった。
不慮の事故で命を落とした妻が、現世をさまよいながらもやがて旅立ちの日を迎えたとき、
その魂が海の朝焼けとともに消えてなくなるのを見つめる夫の役が彼だった。号泣した。

松村達雄にエド・マクベインと、今年はやけに僕の好きな人ばかりが亡くなっている。
せつないけれど自然の摂理だ。カレー食ってうんこするのと同じくらい当たり前のことだ。
でも、津嘉山さんにはもうしばらく元気でいてもらいたいなあと願っています。

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