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2005/06/15 (Wed) 13:28

日曜は午後から美容院に行った。

担当は田中美保似のいかにも読者モデルっぽい女の子だったが、
約90分の浅い眠りから目覚めた散髪台のグレゴール・ザムザこと私の眉は
石原良純ばりの勝ち気な毒虫眉に豹変していてすっかり絶望したのだった。
人生には往々にして事ある毎に己が敗残者であると痛感させられる瞬間がある。
黄泉の河畔でサンタナの「哀愁のヨーロッパ」を爪弾いては
100万ドルの愛想を取り繕い、死ぬまで周囲にばら撒き続けるライフスタイルこそ
自分には相応しいのだろうと悲嘆に暮れる私をよそに、
担当の田中美保は「畳の線は踏んじゃダメなんです」と茶道の話を始めていた。
高校時代、田中は選択科目で裏千家の先生に習っていたそうで、
「裏千家ってお茶と一緒に洋菓子が出るんですよ。うふふ」と笑っていた。
笑いながら、私は洗髪台にねじ伏せられ、括り付けられた。
その光景はさしずめ「マラソンマン」という古いサスペンススリラーの、
ダスティン・ホフマンがローレンス・オリヴィエに歯を抜かれるシーンのようだった。
なんだかくらくらしてきた。入梅のせいだ。なまじ可憐な彼女も悪い。
「あの、突然なんですけど」田中が切り出した。
「何」「お料理に大切な『あいうえお』って知ってます?」
「『さしすせそ』の間違いやろはげ」と頭ごなしに否定するのも大人気ないし、
訂正したら今度は自分が「『そ』はソースの『そ』」と本気で間違えそうだったので、
さもしりなん生き恥の上塗りだけはどうにか回避すべく
「知ってる。『あ』は『愛情』の『あ』や」と紳士的に答えた。夕凪が訪れた。

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